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〜綴〜
先住民を退治した井波は眠いと帰って行き、昨夜は凪野と舟木で安酒を煽った。
二人はいつの間にかへばってしまい、気づいたら一人で喋って、返事がない事に気付いて酒盛りは終了。
窓から見える井波の部屋の明かりがついていないのを見て、もう寝ちゃったんだなとほんの少し寂しくなった。
先住民は一匹いたらもっと沢山いると聞いた事がある。それが本当ならただの悲劇ではあるけれど、また井波の家に泊まれる理由になると考えると、中々稀にみるポジティブさだと笑みが溢れた。
二人が潰れてしまう前に、凪野が大事な事を話していた。
一枚しかない掛け布団を何とか二人に掛け、グラスを片付けながらその話を思い出す。
「東京のライブハウスにつてがあるって、Cosmosの笹野さんが!箱はちっさいんだけどね、結構人気高いって。そこ出てみようよ!」
凪野は持って来た話を嬉しそうに披露する。
俺は首を傾げる。
「ちっさいってどれくらい?」
俺が凪野のグラスにウイスキーをダバダバ注ぐと、「わぁっ!もう飲めないよっ」なんてグラススレスレのウイスキーに口をつけ、ズズッと啜った。それから、「ねぇ!出ようよ!」といつもの無邪気さ全開だ。
舟木はウンウンと隣で頷いている。
「よぉ〜し!じゃ、出るか!」
俺はグラスを二人に突き出す。
カンと音が鳴り、一気した後、二人からの返事がポツポツと途切れだし、やがて途絶えた。
ライブ…早くやりたいな。
そしたら…
そしたら井波に…
邪な気持ちが抑えきれない。
こんなじゃダメだとキツく目を閉じては、自分の唇を指先でなぞった。
何度か触れた井波の頰を思い出して。
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