24

1/1
前へ
/89ページ
次へ

24

24 〜綴〜 初日からあんまりに接客出来ない俺は何故か店の入り口に立たされた。 「もういいよ、如月くんは店の前に立ってて」 店長にそう言われて仕方なく立つ俺に、チラホラ視線を感じ始め、気づいたら女に囲まれていた。 東京って凄い… 「ねぇねぇ、似合う?」 「ぁ…はい、お似合いです」 「ヤダァ〜、じゃあ買っちゃお!」 「ありがとうございます」 「如月くん!私はっ!似合う?どっちが好き?」 「あぁ…えっと…こっち…でしょうか」 「だと思ったぁ〜!こっちにするわ!」 俺はチラッと店長の顔を見ると、無言でうんうんと頷いていた。 なんか、凄い疲れるな… グッタリした体のまま時計を見たら終了時刻。 携帯には、井波から向かいのファーストフード店に居るから終わったら来いと連絡が入っていた。 急いで着替えを済ませて店に向かう。 そこでの井波は様子が変で、ちょっとビックリした。 いつもより声がデカいし、目も合わせようとしない。 ボソリと呟かれた言葉。 「香水…クッサ」 その言葉に、バカな俺は一瞬期待した。 妬いてくれたんだろうか?なんて。 だけど、そんなわけないと慌てて自分の体をクンクン嗅ぐ真似事をしてみせた。 そうしたら、井波は目を細めて笑う。 いつもみたいに、「ヒャヒャヒャ」と声を出して。 それに安堵して、苦笑いする。 気持ちは燻っている。何とかやり過ごすんだと、ブレーキを精一杯踏み込みながら。 その後、凪野から聞いていたライブハウスを覗きに行く事になって、四人でダラダラと歩きながらそこへ向かった。 凪野と舟木が並んで前を行く。後に続いて、俺と井波。 「いつから来てたの?」 「最初から」 俺の質問にいつものようにストレートに答えてくれる井波。 「バイトの間、暇だったんじゃない?」 「カーネルサンダース見れたから」 「何それ?」 「ヒャヒャヒャ」 井波は俺の肩を抱いて大笑いした。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加