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〜綴〜
白い肌が紅潮して、可愛く垂れた瞳が縋るように俺を見つめている事に、本人は気づいていないんだろう。
まさかリアラさんと会ってた事が瞬殺でバレちゃうなんて、悪い事は出来たもんじゃないな。
言い訳をしなければという自分と、今更手遅れだろうと嘆く自分が、まるで悪魔と天使の囁きのようにして、頭を支配していた。
肩を掴んだ井波から
まさかのキス。
触れただけのキス。
離したくなくてキツく抱き寄せた。
「痛い…」
「ぁ…ごめっ…っ!…んっ」
井波からまたキス。
深く赤い舌が俺の口内で裸になる。
散々絡み合った濃厚なキスが夢のように離れていく。
「井波…どうしよう…好きだよ…どうしたら…」
ジワリと涙腺が緩んだ。
俺達は本気で音楽をしなくちゃならない。
俺達は仲間でなければいけない。
それでも、これは愛なんだ…。
苦しい。
好きで
苦しい。
こんな事をどうやって伝えたらいい?
「俺…重いね」
苦笑いして、形の良い頭を抱きしめ髪を撫でた。
井波は暫く黙っていて、それから小さく呟いた。
「きっと………俺の方が重い」
その言葉は
宝物みたいに輝いて
俺の涙腺を壊した。
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