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54 〜宝〜 "きっと俺の方が重い" 間違いなかった。 たった今、浮気と取れる行為を目の前にしたのに、見つめられて、別れを告げられるのが怖すぎて、キスをしてしまうような俺が、重くないはずなかった。 心底如月が好きだ。 声が、髪が、目が、そのカリスマ的オーラが… 全てが俺に向けば良い…そんな独占欲。 如月は驚いた顔をして、クシャッと顔を綻ばせた。バカみたいに涙を流しながら。 「今日はさ、…井波の家に居ようかな」 如月が額同士を合わせるようにして鼻先を擦り合わせてくる。 「都合良いんだな」 「そうなんです」 我慢出来ずヒャヒャッと笑ってしまう。 玄関の中に戻った俺達は、学生の頃のように狭い部屋で好きな事をして過ごした。 如月は音楽雑誌を読んだり、タバコを吸いながら映画を観たり。俺はギターを抱いて、ただひたすらに湧き上がる音と戯れた。 愛おしい時間で、一生こうして居られれば良いと思った。 気付いたら如月が鼻歌を歌っていた。 メロディが綺麗で、いつの間にかギターで後を追っていた。 顔を見合わせて続ける。 如月が鼻歌をやめて、ゆっくり近づいてくる。 床についた手のひらが、ヒタヒタと俺に近づいて、胸元が重なると、そのままゆっくり背中が床とくっついて… 俺達は何度も キスをした。
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