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〜宝〜
"きっと俺の方が重い"
間違いなかった。
たった今、浮気と取れる行為を目の前にしたのに、見つめられて、別れを告げられるのが怖すぎて、キスをしてしまうような俺が、重くないはずなかった。
心底如月が好きだ。
声が、髪が、目が、そのカリスマ的オーラが…
全てが俺に向けば良い…そんな独占欲。
如月は驚いた顔をして、クシャッと顔を綻ばせた。バカみたいに涙を流しながら。
「今日はさ、…井波の家に居ようかな」
如月が額同士を合わせるようにして鼻先を擦り合わせてくる。
「都合良いんだな」
「そうなんです」
我慢出来ずヒャヒャッと笑ってしまう。
玄関の中に戻った俺達は、学生の頃のように狭い部屋で好きな事をして過ごした。
如月は音楽雑誌を読んだり、タバコを吸いながら映画を観たり。俺はギターを抱いて、ただひたすらに湧き上がる音と戯れた。
愛おしい時間で、一生こうして居られれば良いと思った。
気付いたら如月が鼻歌を歌っていた。
メロディが綺麗で、いつの間にかギターで後を追っていた。
顔を見合わせて続ける。
如月が鼻歌をやめて、ゆっくり近づいてくる。
床についた手のひらが、ヒタヒタと俺に近づいて、胸元が重なると、そのままゆっくり背中が床とくっついて…
俺達は何度も
キスをした。
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