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56 〜宝〜 …起きていた。 寝言を言って少ししてから如月が髪を弄ってくるから、目が覚めたんだ。 瞼を開くタイミングを完全に見失っていた。 俺に大好きと言って欲しい…それを聞いただけでも、心臓がバクバクした。なのに、更に悪ふざけみたいにして、如月はバカを言う。 「壮大なセックスってなんだよ」 起き上がり胡座をかいて、一人呟いた。 如月と俺は両思いだし、キスもする。 だけど… 一線を越えたりはしていない。 音楽を真剣にする約束 見失いたくはない"仲間"という意識 ただ、それを越えてくる独占欲と… 混ざり合いたいと願う魂。 如月と 壮大なセックス …明日も、今日みたいに晴れるかな。 窓から覗いた空は群青色。 深い夜を薄めて、朝を連れてくる。 月はもういない。 如月の言う壮大な世界を眺めながら、俺はエロいセックスを妄想し、苦笑いした。 あぁ…これがおまえの言う壮大なセックスね… まったく、健全じゃない上に、すこぶる変態っぽくて如月らしい。 結局、少し眠ってすぐに朝が来た。 目覚まし時計かと思うほどの勢いで携帯が鳴る。 「はぃ…」 「あぁーっ!その声はっ!昨日相当飲んだでしょ!」 …凪野だ。 俺は頭を掻きながら布団から起き上がった。 冷蔵庫まで歩き、中からコーヒーを取り出す。 グラスに注いでいる間も、凪野はギャーギャーと騒いでいた。 ゴキュッゴキュッと喉が鳴ると、凪野は更に喚いた。 「ちょっとー!井波くん、何か飲んでる場合じゃないのっ!!鮫島さんの友達がね!もう乗らなくなったバンを格安でNOT-FOUNDに売ってくれるって言うの!ツアーと言えば!バンでしょ!いるっしょ!バンでしょっ!」 俺は耳を押さえながら「はいはい」と呟いた。 「予算は?」 「大丈夫!今までのライブの売り上げ、ちゃんと彩が貯めてるから!」 「さっすが堅実だな、舟木は」 「最初俺が管理するって言ったら、瞬は絶対ダメ!って言うんだもん。俺だって出来るのに!」 「はは、どーせ無くすから!とか言われたんだろ」 「ゲェ〜、何で分かるんだよ」 「だって、今年入ってから財布無くしたの幾つめだよ」 「え〜…それはぁ〜…まぁ、三つ…ってまぁ良いじゃん!それよりNOT-FOUND号!嬉しいね!俺、超楽しみだぁ〜!井波くんは?楽しみっ?」 俺はまた窓の外を見た。 「あぁ…スゲェ…楽しみ」 「ヤッタァー!頑張ろうね!」 「あぁ」 「じゃあ、バンの方、話は進めておくから!今日中には終わらせるよ!じゃあね!」 「はーい」 騒がしい。 凪野はマジで賑やかだ。 そんでもって超…フットワークが軽い。 俺も如月も腰が重くて、その辺りは助かっていた。 アイツ、まだ高校生だよな?学校ちゃんと行っってんだろうな…。
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