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〜綴〜
頭の芯が疼く。
どうにかなりそうだった。
向かい合い、お互いのモノを握り合ってるだけで、身体が壊れそうな熱を持つ。
「…っ…はぁ…」
「ぃ…痛いか?」
ゆるゆると恐る恐る上下する井波の手が止まる。
俺は頭を左右に振り、井波の後頭部を引き寄せた。
「…すっごい…気持ちいい…」
耳元で囁くと、井波の白い肌が赤く染まる。
可愛い…。
「井波…こっち向いて」
頰を撫でて、唇を塞いだ。
「…んっ…っ…」
クチュッと音を立てながら舌を絡め合う。
井波の身体はビクビクと小さく揺れる。立てていた膝を寄せ、身を捩るようにすると、俺を上目遣いで熱っぽく見上げて掠れる声で呟いた。
「如月…イク…も…無理」
俺が無理です、とだけ返したいのを飲み込んだ。
あんまりに扇情的なその色欲に溺れた恋人の初めてみる顔の威力たるや、計り知れない。
「一緒にいこ…ちゃんと…握って」
井波が快楽に緩めた手を俺の熱に絡めた。
「ぃ…イクッ」
井波はギュッと身体に力込めた。俺はその表情を顔を傾けて目に焼き付けた。そして、俺も井波の手の中で果てた。
肩に井波が額を預けてくる。
俺はその頭を汚れていない方の手で撫でた。
「如月」
「…何?」
「……如月…」
井波はまるでうわ言のように俺を呼んだ。
「井波?」
「…これが…間違いだって…思いたくない」
井波の言葉にハッとして、撫でていた頭をギュッと引き寄せた。
「間違いなんかじゃないよ…間違いじゃない…井波、好きだよ、好きなんだ…」
肩が冷たくて、井波が泣いているのが分かった。
俺達は、何が怖いんだろう。
俺達は、何も変わらないけど、追い風のようにやってくる現状の変化に、柔らかな心はグラグラと揺れていた。
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