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〜綴〜
どんな風に未来の階段を登って行くのか、自分では想像がつかなかった。
俺のつまらない泥沼の中に、土足で踏み込んできた井波は、真っ白な手を俺に差し出して、沼の底から引き摺り出した。井波が奏でるぐちゃぐちゃな不協和音に似た旋律と、相反する美しい言葉を並べ立てても足りない耽美な旋律は、俺を激しく刺激して、音楽の虜にした。
falling downで始まったLIVEには、昨日会場にいた客もチラホラ見てとれた。
結局、俺と井波の寝坊のせいでリハには間に合わず、ちょっとばかり電話越しにサワキタさんからお叱りを受けた。現在、何とか本番中といったところだ。
井波が所望した"幻想の紫"を披露する。
歌詞をなぞるたびに、井波の身体に触れていた事を思い出してゾクゾクした。
天を仰ぐように跪き、掲げた両手に握ったマイクに願うように声を吹き込む。
井波がギターソロで俺に絡んでくる。我慢出来なかった俺は、後ろから抱きつくように井波の腹に片手を回し、首筋に痕を残すキスをした。
客席からは、パフォーマンスに見えただろうか。
俺の想いは
パフォーマンスに見えてるだろうか。
いつまでも唇に残る井波の肌の感触を感じながら、終盤に差し掛かり、アンコールでMOONが演奏される。ギターのネックが天に掲げられる。光が当たって、彼が完全に天使に見える。
俺の天使。
俺だけの天使。
頭の中が
井波でいっぱいだ。
頭の中が
井波で…
もう、壊してしまおうか。
いっそ…
なんて凶悪な
恋心。
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