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〜宝〜
打ち上げもそこそこに、俺たちはサワキタさんが用意してくれた別のホテルに入った。
部屋割りは固定。
俺と如月は同室だ。
酒が入ると、下半身が緩くなるのか、フワフワする俺はよく喋る。普段蓋をしたままの色々な思いが、玩具箱をひっくり返したように散らばる。
「如月ぃ…」
「井波、大丈夫?」
「ぜんっぜん大丈夫!問題あるよ〜に見えるか?」
「あんまり大丈夫そうには見えないな」
「如月はさぁ〜、どーして、そう全く変わらないわけ?飲んでんだろ?もーさー、機械じゃん!こ〜、肘だけ稼働して?ガシャンガシャンみたいな?ジョッキを上下させるだけ!永遠に!」
ベッドに大の字で身体を投げた。
「井波は楽しそうだな。飲んだらほんっと、あの無口で寡黙な青年は何処に行ったんだって思う」
「ここに居るじゃん」
顔だけ隣のベッドに腰掛ける如月に向ける。
如月が立ち上がって、ギシッとベッドに上がってくる。
大の字で寝転がる俺の上に手をついて見下ろしてくる。
「ここに…居る?」
如月の呟きは、どうしてこんなに寂しそうなんだろう。
「居るって…言ってるじゃん」
長い黒髪がサラサラと頰を掠める。
俺はそれを引っ掴む。グイと引き寄せると、驚いた顔の如月が鼻先の触れ合う距離で目をパチパチさせる。それから、苦笑いして言った。
「井波は俺の髪をロープか何かだと思ってんだろ」
「もし、そうだったら、このロープは誰にも見つからない場所に繋いだって良いんだぜ」
俺の返した言葉に、如月はまた目を見開いて驚いたような顔をしてから、ゆっくり目を細めた。
愛おしそうに俺を見下ろすその目が好きだ。
「繋いでくれないの?…また悪さされるよ」
如月は俺の額にキスをしながら、下半身を撫でた。
「…如月…」
「井波…好きだよ…」
如月が、パンツのファスナーを下げる。脱がしやすいようにゆっくり腰を浮かせた。
「エロいなぁ…」
「好きなんだろ」
「たまんないね…」
キツく抱きしめられて、少し苦しい。
互いの熱を愛撫し合う。
口づけを交わしながら、息が上がる。
如月の快感を逃して我慢する表情が堪らなくエッチだ。
「っ…っはぁ……ぁっ…」
甘い喘ぎは、どちらからともなく溢れでる。
片方のベッドは汚れていく。
軋んで、よれて、濡れていく。
もう、俺達は元に戻れない。
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