53人が本棚に入れています
本棚に追加
「ヤベぇな、その緩んだツラ」
玄関を開けた瞬間に兄貴に言われて、顔が引き攣った。
だって、今まさに俺の目の前で靴を脱ごうとしているのは聖夜くん。
パッと振り返った聖夜くんは俺を見て片眉を動かした。そして、
「バーカ!何て顔してんだよ!」
俺の両頬を摘んで横に伸ばしてくる。
「……うまくいったか?」
聞かれてとりあえず頷くと、聖夜くんは笑って手を離した。
「よっし!飲むぞ!」
「は?」
肩を組まれて声が裏返る。
「新年じゃん!あとはお前らの恋愛成就と俺の激励会?」
ニッと歯を見せられて何となく胸が苦しい。だが、
「おい!んな顔すんな!俺は俺でちゃんと告ってキリつけてんだから後悔してねぇよ!」
聖夜くんは笑って部屋へと促してきた。
「でも……」
「静香ちゃん、泣かせんなよ!」
パッと変わった真剣な顔で拳を肩にぶつけられて頷く。
「お前だから引き下がるんだ。もうグダグダ言ってないでちゃんと……」
「大丈夫!ガチで好きだって今日もう何回も実感したから」
それだけはハッキリ聖夜くんを見て言うと、聖夜くんはふっと表情を緩めた。
「恋愛興味ないとか言ってたくせに?」
「それは静香さんに教えてもらったから!」
「うーわっ、何だよ、そのエロい響き」
「違っ!!」
「よし!酒!!」
無理矢理リビングへと引き摺られながら聖夜くんの様子を窺う。
「悪いと思うなら絶対幸せになれ!」
ベッと舌を出す聖夜くんがめちゃくちゃカッコよく見えた。
最初のコメントを投稿しよう!