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聖夜くんに絡まれつつ、兄貴と聖夜くんが飲む間、俺はつまみだけを摘んで時間は過ぎていく。
「……お前、マジで適当な付き合い方すんなよ」
兄貴が潰れてテーブルに突っ伏したまま寝てしまった聖夜くんを見て口を開いた。
「しねぇし」
答えつつ、今日の初詣を思い出す。
あんな人混みに居るだけで面倒なのに、静香さんとだと一緒に手を繋いでいるだけでどれだけでも待つことができた。
あの小さい手と細い指。
絡めていると照れくさそうにする姿。
話は尽きなくて、お参りした後もカフェで話し続けたくらい。
ちょっと前まで一緒に居たのに……何でもう会いたいんだろう?
あの細い腰を抱き寄せてくっついていたい。
こんなこと思ったこともないのに、これまでどうやって静香さんと過ごしてきたかわからないほど頭の中が静香さんでいっぱいだ。
「むしろ……好き過ぎてヤベぇ」
「そりゃ、よかったな」
呟くと、兄貴にケタケタと笑われる。
「よくねぇよ」
項垂れると、兄貴は缶ビールを手にしてプシッと音をたてた。
そのままゴクゴクと喉を動かしてうまそうに声を出す。
「その人のことばっか考えて何も手につかなくなって……あいつが頑張ってるから俺ももっと頑張ろうってパワーになって……」
缶をテーブルに置いてその縁を指でなぞりながら兄貴はポツポツと話した。
「……一緒に傍で支え合ってもっと頑張ろうって覚悟決めんじゃねぇの?」
こっちを見るその目は兄貴のくせにちょっとカッコいい。
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