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「聖夜くんも来るんでしょ?」
「いや、バイトになったって」
昨日、兄貴から聞いたのを口にすると静香さんの表情が少し曇った。
「聖夜くんね、バレーサークル入ったって聞いた?」
「サークル?」
正月に聖夜くんから聞いた話にすると、静香さんがまだ何とも言えない顔のままこっちを不安そうに見てくる。
「そ!そこで飲み会とか旅行とかあるからバイトしてお金貯めんだって!で、彼女も作って自慢するって意気込んでたよ」
気を遣われたのかもしれない。
でも、聖夜くん自身が前向きに世界を広げているのなら……しかも、またバレーをやってくれるのは応援してあげたい。
「俺らもイチャついて自慢しまくろーね!」
手を引いてこっちを向く静香さんを抱き締める。
「ちょっ、外っ!!」
「ここ人居ない」
木と建物の影で人の姿はないことを確認済みの俺はそのまま逃げようとする静香さんの腰に手をやって抱き寄せた。
「今日は……逃げないで」
もう片手は頬に添えて腰を折る。
顔を近づけていくと、眉の寄った静香さんがキュッと目を閉じた。
その小さなぷるんとした唇にそっと合わせる。
思った以上の柔らかさにそのまま更に押し付けた。
ギュッと俺の袖を握っている静香さん。
離してその顔を覗くと、真っ赤な顔で俺の胸に隠れてしまう。
「マジで……好きだわ」
俺はギュッと力いっぱいその小さな体を抱き締めた。
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