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彩光3-⑶
「さて、次は位置と距離を調節しなきゃ」
天馬はそう言うと、巨大階段を前後に押したり引いたりし始めた。やがて、階段にはめ込んだ鏡とそこに映った巨大階段が同じ大きさにぴたりと収まるのが見えた。
「じゃあ上がりますよ」
山伏の格好をした天馬が段に上がると、鏡の中に階段の途中に立つ五寸ほどの烏天狗が出現した。
「これを写真に撮ったのか……」
「そうです。もちろん、鏡の前に人や手が入れば映ってしまいますから、鏡の縁から内側に自分の姿が入り込まないように気をつけなければなりません」
「そうか、つまり天狗が鏡の縁に向かって手を伸ばし、外から子供が天狗に向かって手を伸ばすわけだな」
「正面から撮ることは難しいのですが、あまり斜めから取ると天狗の写り方が不自然になります。ほどよく離れた位置からほんの少し斜めに撮ることが大事なのです」
天馬はからくりの説明を終えると、「これで合ってますか?桃音さん」と尋ねた。
「はい、合ってます。私たちが真村さんから教わったやり方、そのままでした」
「まさか子供たちだけで、これほど手の込んだ写真を撮っていたとは……」
「子供たちに四枚の写真を見せられた真村店主は、かつて自分が手掛けたいんちき写真の技を使ってもう一枚、撮るよう子供たちをそそのかしたのです」
「いったい何のために?」
「意地でしょう。花夢さんが四枚の写真を見て「正体見破ったり」と言ったら、この五枚目を見せて生意気な鼻をへし折ってやろうと思ったのです」
天馬はそう言うと、流介と桃音に近くに来るよう手招きをした。
「さあ、作戦を練りましょう。まずはこれを一人づつ、隠し持っていて下さい」
天馬がそう言って流介に手渡したのは、握り拳大の包みだった。
「なんだいこれは。中を見てもいいかい?」
「どうぞ。ただし散らばしたりしないよう、そっと見て下さい」
天馬が口にした注意の意味を理解できないまま、流介は包みをそっと開いた。
「わっ、これは……なぜこんな物を?」
包みの中から出てきた黒い物体に流介が思わず戸惑いの声を上げると、天馬は「それこそがこれから僕たちが実行する「作戦」に必要な道具なのです」と意味ありげな笑みを浮かべた。
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