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「昔は今頃も雪積もったよね」
「雪、少なくなった。たまにドカーって降る年もあるけど」
「雪といえば、高校の時さ、ほら、実家の前が30㎝以上積もってるから、朝早く起こされて、さすがに自転車では無理だからって、在所の入り口まで歩いて出て、そこからバスに乗って高校まで行くことも一冬に何回かあったよね」
「うん、あった。あった」
「あのバスが廃止されて、今の高校生たちはどうやって通ってるんやろ?」
「親の車やて。雨やちょっとした雪の日でも私らの頃はみんなカッパ着て自転車やったけど、ちょっとの雨でも親の車やわ」
バスが走る県道、実家のある集落入り口にある停留所まで2㎞余り、バスは遠回りなので、県道、国道などを通り高校まで6、7㎞、もっとあったかもしれない。私達兄妹は実家から高校まで最短約7㎞の自転車通学だった。
「在所の中を歩いてバス停に着くまでに30㎝が20㎝ぐらいになって、バスに乗って高校に向かう間に雪がみるみる減って、で、高校前でバスを降りると、さらさらーって風で飛ぶぐらいの雪しかない」
「うん、うん。履いてる長靴が恥ずかしいげんて。重い鞄を持って2㎞の歩き。で、バス代、私のこの労力はなんやったやー、やろ?」
「そうそう。こんなんだったら自動車の轍を無理矢理にでも自転車を引っ張ってくればよかった、って思うんだよね」
「姉ちゃん、やりそう」
「考えてみて、帰り、メチャメチャ本数が少ないバスを待って、乗って、また2㎞歩くんだよ。もう嫌でしょ?」
実家は山をかついだ谷のような所で積雪が他地域より多い。高校は浜側にあり雪が少ない。たまに逆転の時もあるが。
「高校といえば、今回、校舎の一部がダメになって、近くの学校に間借りしているらしいよ」
「そんなことに?」
「見た目は変わらないように見えるげんけど液状化? 中がぐちゃぐちゃねんて」
「近くに川があったよね。昔のことだから、埋め立てるのに浜の砂とか使ったんじゃ?」
「ありえそう。トイレも綺麗に直したばかりやったんに、もったいない」
妹の娘も卒業生、数年前まで校舎に出入りしていたのだ。
「どうするんだろ?」
「どうするげんろ。すぐに直せんし」
「そうだよね。だから間借りしてるんだろうし」
話題がいつの間にか地震関連になるのは避けられない。冬から春へと季節が変わっても、元通りにはならない、多分、何年経っても……。
そんなことを思う2月の終わりだった。
〈了〉
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