今冬に思う

1/5

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

今冬に思う

 ――水は出たけど、料理の時はイライラ。仕上げにペットボトルの水かけないといけないから  2月の半ば過ぎに妹からそんなメールを貰った。水が出たと聞いたのはそれより3日ほど前だったろうか。  それから数日後、水が出るようになってから1週間ほど、私は彼女に電話をした。 「まだ飲めなかったの? 結構な地域が飲めるようになっているから、飲めてるもんだと思ってたから」 「まだねんて。生でサラダにする野菜とか最後にペットボトルの水で洗うげんて」 「フタに穴開けて、シャワーみたいに?」 「うん。お茶碗や皿を洗う時も最後に中側だけ。洗面所で顔洗ってて口ゆすいで、あっ、ってなる」 「それは確かに面倒だわ」 「でも、洗濯もできるしお風呂にも入れる。私は避難していたから、ずっとここで暮らしていた人はずーっと大変だったやろで。まだ水が出てないところもあるし……贅沢ねんけど」  元日に被災、その数日後、続く断水で不便を強いられ、早々に音を上げた大学生の娘と共に妹は金沢の娘のアパートに避難した。妹の夫は会社に出勤するため、断水が解消されるまでの間、平日はペットボトルの水を頼りに暮らし、週末洗濯物を車に積みアパートへ通うという生活だった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加