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「お義父さんの四十九日法要でそっちに行った時にね、タクシーに乗ったんやけど」
「うん」
「葬儀のあとにね、雪があるかもしれないし、寒いだろうからって、納骨は先延ばしにすることに決まってて、お経だけだったんだけどね」
「うん」
「夫の実家までの間にタクシーの運転手さんが地震からそんなに経たない時の話をしてきて。大変だったーって」
「その人も被災してるんやないがん?」
「していたんだと思う」
「そうやよね」
「でも、この辺はまだ被害が少なかったからか、営業していたみたいで、マスコミ関係の人から高岡(富山)まで朝の4時だか5時だかに迎えに来てくれって。それで奥能登まで走って、また高岡までその人を送って、それから家に帰ると夜中なんだって。同僚がみんな嫌がるからその何日かのうちの2回も行ったと。水や食料持って、トイレもダメだから水を飲まないようにして、ガソリンスタンドも備蓄がなくなって営業してないところもあるから、ガソリンも積んでいったって言うの。それは大変でしたね、って応えたけど。それって、そこまで必要なんやろか?」
「知らせることは大切だからやないがん?」
妹のその言葉に全肯定ができず、言葉にして返しはしなかった。この辺のタクシーの運転手は50代以上で平均年齢は多分60歳を超えていると思われる。夫の家に帰る度に乗るタクシーの運転手が私より若い人だったことはほとんどない。普通じゃない状況での長距離運転をなんとも思わなかったのだろうか。それに、状況を鑑みれば地元でタクシーが必要な人がいてもおかしくはない。その運転手は最後に「いくらお金が良ても、もう嫌わ」とその話を締めた。
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