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「そうそう、夫の実家に鍵がついたのよ。お義父さんが入院中だったし、火事場泥棒みたいな人が湧いて出て物騒だからって」
「鍵、ないがん?」
「中から閉める鍵はあったけど、出かける時に外から閉められなかった。で、勝手口と玄関を外から閉められるようにしたらしい」
「田舎あるあるや」
「結婚して初めて何日か泊まった時、朝起きて二階から下りてくとね。居間に誰かが座ってるの。驚くでしょ?」
「誰なん?」
「斜め向かいの家のおじさん」
「えーっ!」
「お義父さんもお義母さんもいないのに、普通に座ってテレビ見てる。毎朝のように六時半にはいるんやよ。鍵かけてないからねー」
「まあ、実家も昔はそうやったよね」
「そうやけど、さすがに近所の人が朝早くから勝手に入って座ってることはなかったわ。それでね、その頃、お義母さんから回覧をお向かいに持っていくように言われて。でね、あの家は鍵がかかってるから郵便受けに入れてくればいいから、って言うの」
「うん」
「で、鍵かけている家はあそこだけ、って言うのね。普通はかけるものだと私は思ったけど、田舎では鍵をかけてる方が普通じゃないということみたい」
「うん、わかる」
「あれから、うん十年経ってようやく鍵がついた。まあでも、昼間は相変わらず開けっぱなしなんだけどね」
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