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今冬に思う
――水は出たけど、料理の時はイライラ。仕上げにペットボトルの水かけないといけないから
2月の半ば過ぎに妹からそんなメールを貰った。水が出たと聞いたのはそれより3日ほど前だったろうか。
それから数日後、水が出るようになってから1週間ほど、私は彼女に電話をした。
「まだ飲めなかったの? 結構な地域が飲めるようになっているから、飲めてるもんだと思ってたから」
「まだねんて。生でサラダにする野菜とか最後にペットボトルの水で洗うげんて」
「フタに穴開けて、シャワーみたいに?」
「うん。お茶碗や皿を洗う時も最後に中側だけ。洗面所で顔洗ってて口ゆすいで、あっ、ってなる」
「それは確かに面倒だわ」
「でも、洗濯もできるしお風呂にも入れる。私は避難していたから、ずっとここで暮らしていた人はずーっと大変だったやろで。まだ水が出てないところもあるし……贅沢ねんけど」
元日に被災、その数日後、続く断水で不便を強いられ、早々に音を上げた大学生の娘と共に妹は金沢の娘のアパートに避難した。妹の夫は会社に出勤するため、断水が解消されるまでの間、平日はペットボトルの水を頼りに暮らし、週末洗濯物を車に積みアパートへ通うという生活だった。
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