復讐の相棒は、成仏できない幽霊夫です。

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颯真の浮気に気付いて苦しんだ1週間。 証拠をつかむために耐えた3週間。 心と身体が壊れたこの4週間は、長く長く感じた。 「同じ家にいるのが嫌。別居したいです」 「離れて暮らせば、女が喜ぶだけですよ」 そうか。 確かにそうだし、それ以上に、颯真が喜ぶだろう (浮気相手の女より、颯真が憎い) お互いを大切に思い、愛し合い信頼している。 そう思っていたのは私だけ? 「颯真なんか、いなくなればいいのに」 香帆の口からポロっと〈本音〉が出た。 香帆は、学生時代に『スーパーのレジ打ちバイト』をしていた。 同僚の主婦たちは、いつも〈夫の愚痴〉をいっていた。 「死んでくれたらいいのに」 「そうよ。保険金だけ残してコロッと()けば最高」 「今日こそ、旦那がトラックに()かれて死にますように」 「ウチの旦那も死にますように!」 彼女たちの会話を聞きながら「こんな結婚は絶対にしない」と誓った香帆が、 いま同じことを思って言った。 「颯真なんか、いなくなればいいのに」 香帆の言葉に桜志郎が反応した。 「御主人がいなくなれば、幸せになれますか?」 「幸せ?」 違う気がする。 確かに、いまの香帆は不幸だ。 でも颯真がいなくなれば、幸せというより、 もっと〈解き放たれたもの〉になれる気がする。 苦しみもなく、我慢もしなくていい、何か……、もっと……、 桜志郎が〈答え〉を出した。 「貴女は自由になれる」 「え?」 「御主人がいなくなれば、貴女は自由になれます」 あ、そうか………、 レジ打ちパート主婦たちは、自由になりたかったんだ。 「死んでくれたらいいのに」 「そうよ。保険金だけ残してコロッと逝けば最高」 あの会話。 今なら解かる。理解できる。 (颯真なんか、いなくなればいいのに) 悩みからも苦しみからも解き放たれて、自由になれるから。
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