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「生命保険に入ってる、とおっしゃってましたね」
桜志郎は、白い紙に包まれた〈粉薬〉を香帆に見せた。
「これを飲むと、強い心臓発作が起こります。
遺体が司法解剖されても毒は検出されません」
香帆が言葉の意味を理解するまで、数秒掛った。
つまり……、
「これを颯真に飲ませたら?」
「貴女は自由になれる。しかも大金を手に入れて」
夫の浮気に悩み苦しむ日々から解放される。
夫に浮気されたという『負い目』もなくなる。
母の勧めで掛けていた〈生命保険金 三千万円〉も手に入る。
人生の再出発を求めて、自由になれる。
(いいことばっかり・・・・・・)
地獄の4週間で身も心も疲れ切った香帆は〈粉薬〉を受け取った。
優しい桜志郎を救世主と信じ、ただ自由になりたい、苦しみから逃れたい、
と心底から思った。
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