復讐の相棒は、成仏できない幽霊夫です。

12/68
前へ
/68ページ
次へ
日本の殺人事件の検挙者は、50%以上が被害者の〈親族〉だ。 最近の統計でも〈親族〉は54.3%で、〈友人・知人〉21.6%の倍以上ある。 近親殺人の検挙者は、被害者の〈親〉27.6%、〈子〉22.5%に対して、 〈配偶者〉は33.3%と、もっとも多い。 近親殺人の3件に1件が『配偶者間』で起こっている。 理由は様々だ。 愛して結婚した人を殺すには、それぞれの事情がある。 香帆は「地獄から抜け出したい。自由になりたい」と、夫を殺す決意をした。 「人が多い場所がいい。密室は疑われます」 桜志郎の忠告で、決行場所は駅前のカフェに決めた。 香帆と桜志郎が再会したセルフサービス式の店だ。 颯真を買物に付き合わせて「喉が渇いた」とカフェに入る。 颯真のカップに毒を入れて飲むのを待つ。 それだけで、三千万円と自由が手に入る。 レジで〈コーヒー〉と〈カプチーノ〉をオーダーした。 「カウンターが空いてるよ」 香帆は颯真をカウンターに誘った。 香帆の右は颯真で、左は空席。〈その空席の左〉に桜志郎が座っている。 右から、颯真→香帆→空席→桜志郎、の順でカウンターに並んだ。 香帆と桜志郎は視線を合わせない。知らない人の設定だ。 桜志郎に「来てほしい」と頼んだのは香帆だ。 「わかりました。近くにいます」と応えてくれた。 『プラスチックごみ削減』でストロー不要のカップは、飲み口が大きい。 颯真がスマホを見ている間に、サッと薬を入れるのは簡単だった。 (私とカフェにいるのに、スマホが気になるの) (これを飲んで、いなくなれ) 颯真が、スマホをカウンターに置いた。 すこし伸びをして、カップを手に取る。 毒入りコーヒーが、颯真の口に近づいた。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加