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死んだ颯真は『死者面談室』に通された。
真っ白な部屋を予想していたが、明るくてカラフルな部屋だった。
(目がチカチカするなぁ。威厳がまるで無いで)
(そやけど、急に胸が苦しなって、あっというまに死ぬなんて)
(香帆もビックリしたやろなぁ。泣いてるやろなぁ)
いろいろ考えながら待っていると、
「お待たせしました」
スタッフが現れた。
天使を予想していたが、事務服を着た30歳くらいの女性だった。
「もう、銀行員やん」
「三途川と申します。先日は御愁傷様でした」
「はい」
「おめでとうございます」
「は?」
「佐山颯真さんの天国行きが決定しました」
「あ、そうなんや」
「天国に行ける人は、67%です」
「案外多いやん」
「いえいえ、三人に一人は地獄行きですから」
「あぁ、そうか」
「天国行きの方には特典がございます。1つお選びください」
特典①は、生まれ変わる『もの』を指定できる権利。
「一番人気は人間ですが、パンダとコアラも希望者が多いです」
特典②は、生まれ変わらないこと、を希望する権利。
「人間社会に愛想を尽かして、ずっと天国に居たい人が希望します」
特典③は、死ぬ直前の30分を動画で観る権利。
「自分がどう死んだか知りたい。家族の姿や様子を見たい人が希望します」
颯真は質問した。
「③を選んだら、生まれ変わりはどうなんの?」
「いつ、何に、生まれ変わるか未定です」
「明日、蛇に、とかもあり?」
「十分ありえます」
「それは嫌やなぁ」
「ですが前世の記憶はありませんから、蛇として普通に生きられます」
「ふ~ん……」
何に生まれ変わっても、今の記憶は無くなる。
佐山颯真という人間は消える。ということは……、
「俺③にするわ。めっちゃ呆気のう死んだし、香帆の顔も見たいし」
「はい。かしこまりました。動画の準備を致します」
床からリクライニング・チェアーが出てきた。
颯真が座ると、目の前に50インチのモニターが現れた。
「あ、あの店や」
颯真が倒れたカフェが映った。
動画には音声もある。店のBGMまで聞こえる。
懐かしそうに観ていた颯真だが、
「え? なんや?」
颯真は、食い入るように動画を睨んだ。
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