復讐の相棒は、成仏できない幽霊夫です。

2/41
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
1ヶ月前。 「いらっしゃいませ。御荷物(おにもつ)をお預かり致します」 香帆は29歳の主婦。 パート勤務で『宅配便の受付』をしている。 「こちらの御荷物を京都にですと、1500円でございます」 営業所に持ち込まれる荷物の〈大きさ〉と〈重さ〉を計って、 運送代金を受け取る仕事だ。 お中元、お歳暮、母の日、父の日、バレンタイン、クリスマス……。 荷物が動く繁忙期は、急激に仕事量が増える。 個人売買のフリマアプリが人気で、大量の商品を持ち込む人がいる。 [配送ミス]や[荷物事故]のクレーム対応もあり、データ入力や 備品発注など事務作業も多い。 同僚の藤崎(ふじさき)美緒(みお)と協力して、多忙な業務に就いている。 美緒は30歳の正社員で『クレーム処理の達人』と呼ばれている。 苦情を入れた客に誠心誠意の対応をして、怒っていた客が 最後は「ありがとう」と言うほどだ。 人の話をしっかり聞いて、最善策を導き出せる。しかも美人で独身。 常に冷静で頼りになる最高の同僚だ。 香帆も正社員だったが、同じ営業所の『宅配便ドライバー』颯真と 1年前に結婚した。 結婚を機に香帆は一日5時間のパート勤務になり、颯真の〈扶養〉に入った。 颯真は別の営業所に移動した。 夫婦は同じ営業所に勤務できない、という社内規定があるからだ。 二人は2LDKの賃貸マンションに住んでいる。 4階の南向きの部屋で、香帆は一目で気に入った。 「颯真さんに生命保険を掛けなさい」 結婚前、実家の母が香帆にアドバイスをした。 颯真は車に乗る仕事だから「もしも」のときに必要と諭され、 香帆は颯真を保険に入れた。 死亡保険額は三千万円。受取人は香帆だ 「その額なら安心ね。子供はまだなの?」 美緒はプライベートもどんどん訊いてくる。 「そろそろ妊活しようかな」 仲良しの美緒には何でも答える。すごくいい関係だ。 家庭も職場も円満で幸せ、と思っていた香帆だが……、 (颯真は絶対に浮気してる!) 香帆は確信した。 颯真の勤務内容は詳しく知っている。騙されるわけない。 新婚1年目なのに? 円満だと思ってたのに?  妊活しようっていったのに?  なぜ?  苦悩の日々が始まった。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!