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カフェのレジで、香帆が支払いをした。
オーダーは〈コーヒー〉と〈カプチーノ〉だ。
颯真が2つのカップを運び、二人はカウンター席に並んで座った。
すぐに颯真はスマホを開いて いじり始めた。
香帆が話し掛けても、スマホから目を離さない。
不機嫌になった香帆は、バッグから[白い紙包み]を出した。
包みを開いた香帆は〈コーヒー〉に毒薬をサラサラと入れた。
「えっ! ちょっと待って!!」
ここまで聞いた香帆は、慌てて話を中断させた。
「入れたのは、コーヒーよね?」
「そうや。香帆はコーヒーに毒を入れた」
「でも颯真が飲んだのはカプチーノでしょ!」
「せや。飲む寸前に香帆が替えたからな」
「なのに、なぜ……?」
「カプチーノにも毒が入ってたんや」
「え???」
「香帆の左に男がおったやろ。男がカプチーノに毒を入れたんや」
香帆は、桜志郎の動きにまったく気付かなかった。
颯真のカップに毒を入れることだけ考え、自分のカップは見ていなかった。
それに、桜志郎が裏切ることは想像すらしなかった。
つまり……、
「コーヒーとカプチーノ、両方に毒が入ってた?」
「そういうこっちゃ」
それなら・・・・・・、
「私は間違って颯真を殺した、と思ってたけど、」
「違う。俺を殺したんは、あの男や」
颯真を殺したのは、狩野桜志郎・・・・・・?
(ちょっと待って! 口止め料を取られたじゃない!!)
(三千万円の口止め料を取った男が、颯真を殺した殺人者!?)
騙された。完全に騙された!
香帆が颯真を殺せない、必ず毒殺を中止する、そこまで読んでの行動だ。
桜志郎の 思う壺に嵌まってしまった!!
愕然とする香帆を見ながら、颯真がフワッと立ち上がった。
そこは幽霊ぽい。
「でな、アイツ誰やねん?」
「二人で組んで俺を殺そとしたんやから、アイツとデキてんのか?」
「まさか! 変なこと言わないで」
「あんなホストに、なんの入れ知恵されたんや?」
「ホスト? 違うよ、塾、、、」
え? でも確かに……、
最後に会ったとき、塾経営者の雰囲気は無かった。
「彼は、ホストなの?」
「知らんのか? 新宿のホストや」
あぁ、そうか。なにもかも嘘だ。
カフェで「夫の浮気相談」をしたときから三千万円を狙ってたんだ。
便利屋の浮気調査も嘘だ。
3週間も我慢させて『保険金殺人』に向かわせたんだ。
「いやぁぁぁぁぁぁ~~~!!」
すべてに気付いた香帆は大声で叫んだ。感情が制御できない。
「おい、近所迷惑や」
香帆は座り込んでリビングの床を叩き続けた。
騙された悔しさ。利用された悔しさ。夫を殺された悔しさ。
殺人者から口止め料を取られた悔しさ。
涙が止まらない。でも今までの悲しい涙とは違う。
これは【 悔し涙 】だ。
悔しい! 悔しい! 悔しい!
あの男に同じ思いをさせたい!
香帆は決心した。
復讐してやる!
何が何でも、狩野桜志郎に復讐してやる!!
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