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『相談したいことがあります』
桜志郎のスマホに、香帆からのLINNが届いた。
(今さら何の用だ?)
三千万円を受け取ってから数日が過ぎた。
まさか「やっぱり警察に自首します」とか?
そうなると『殺人教唆』か『殺人幇助』の疑いが桜志郎に掛かる。
『殺人教唆』は殺人を犯すように唆すこと、『殺人幇助』は殺人を手伝うことで、どちらも罪になる。
下手に関わったら面倒だ。桜志郎は連絡を無視した。
1時間後、また香帆から連絡が入った。
『アレを1億円で売って下さい』
(アレ? あの毒薬のことか?)
(しかも、1億!?)
本気か? そんな金があるのか? 誰を殺したい?
桜志郎はスマホの画面を見つめて考えた。
まぁ、とりあえず……、
『会って話しましょう』と返信した。
「よし! キタ!!」
桜志郎からの返信を見た香帆は、ポンと手を打った。
スマホを覗き込んだ颯真は、心配そうだ。
「大丈夫か? 付いてくで」
「いいよ。アイツにも颯真が見えるんでしょ。騒ぎになるじゃない」
「そやなぁ……。まぁ、向こうから見えんとこに居るわ」
次の日、香帆は桜志郎をファミリー・レストランに呼び出した。
颯真の生命保険金三千万円を渡した店だ。
香帆と桜志郎は、テーブルを挟んで向かい合って座った。
「あの薬を1億円で売って」
「なぜ?」
「次は伯母を殺したいの。一人殺しても、二人殺しても同じだし」
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