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桜志郎がプロポーズをしたとき、千代は言った。
「来月、主人の三回忌なの」
故人が亡くなって満2年の法要を『三回忌』という。
千代は、夫の命日に『三回忌』を執り行う予定だ。
「だから……、」
言い難くそうな千代を、桜志郎は優しく抱きしめた。
「優しい千代さんが大好きです。僕は待ちます」
『三回忌』まであと20日。それが終われば千代と結婚する。
そのあと数か月我慢すれば、全財産が俺の物!
と思っていたら、
「で、どないしてくれるんや?」
電話の男は、ドスの利いた関西弁で訊いてきた。
「殺したのは、お兄さんの奥さんですよ」
「兄貴の嫁はそんなことせえへん。オマエがヤッたんやろが」
「違いますよ」
「ほんなら聞くけど、3000万はドコにあるんや?」
「え……」
「金を持ってるモンが、犯人ちゃうんか!?」
た、し、か、に、そういうことになる。
「それとも、オマエと兄貴の嫁はデキてんのか」
「いえ、まさか。とんでもありません」
ここで電話の相手が香帆に変わった。
「ねぇ、どうする? おば様にもバレちゃうよ」
それだけは避けたい。ここは……、
「わかりました。お金は返しします」
3000万を守るために、10億円を捨てられない。
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