復讐の相棒は、成仏できない幽霊夫です。

38/55

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
不動産会社との契約は明日。 契約したら、すぐに〈スケルトン物件〉の工事を始めたい。 内装に相応しい家具や装飾品、グラスや食器も揃えたい。 その前に業者との打ち合わせだ。忙しくなる、が、 「まとまった金がいる……」 桜志郎に融資する銀行やビジネス・ローンは無い。 保証人も担保もないからだ。 そんな桜志郎に「すぐ」金を貸したのは、消費者金融だった。 もちろん『登録賃貸業者』だ。『闇金』ではない。 2カ所を回って、限度額一杯まで借りた。 「利息は高いけど、必ず返せる」 桜志郎は不動産会社と正式な契約を結んだ。 施工業者との打合せも始まった。 大きな借金を背負ったが、千代と結婚したら大丈夫。 だが・・・…、 千代に送ったLINNが既読にならない。 「まさか、体調でも?」 結婚前に死なれたら、すべて水の泡だ。 急いでタワー・マンションに行くと、受付の男性コンシェルジュが不思議そうに言った 「今日は、何方(どなた)を御訪問ですか?」 「もちろん千代さんですよ」 タワー・マンションには、住民の許可がある者しか入れない。 千代がコンシェルジュに伝えていたので、桜志郎は入ることができた。 「いらっしゃいませ。伺っております」と通してくれた。 だが、 「小羽様は、お留守ですよ」 「おばさま?」 (コンシェルジュは千代さんを「おば様」と呼んでるのか?) (「マダム」や「夫人」のつもりか?) コンシェルジュは、桜志郎に不穏な気配を感じた。 「お引き取り下さいませ」 桜志郎はタワー・マンションのロビーから追い出された。 外に出ると、香帆が立っていた。 「小羽様はハワイの別荘よ。数年は帰らないみたい」
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加