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颯真は梨那に溺れ続け、食事中もスマホを手放さない。
香帆が話し掛けても、きちんと言葉を聞いていない。
一緒に出掛ける約束は破るのに、服装や髪型を気遣うようになった。
「残業」「友達と出かける」「同僚と飲みに行く」というが信じられない。
文句をいうと逆切れする。浮気は絶対に認めない。
(こんな人じゃなかった!)
(この結婚は失敗だった?)
眠れない夜が続いた香帆は、仕事に集中できなくなった。
〈冷凍〉の荷物を[冷蔵庫]に入れかけたが、すぐに美緒が気付いてくれた。
「ごめんなさい!」
美緒は「大丈夫よ」と励ましてカバーしてくれる。
「ねぇ、何があったの? 相談してね」
「ちょっと、母の身体が悪くて……」
なんでも話せる美緒だが、『颯真の浮気』だけは言いたくなかった。
結婚するとき、「佐山さんはモテるから、やめた方がいいよ」
「別の営業所の人と噂があるし、お客様にもファンがいるみたい」
「苦労するんじゃないかなぁ?」と忠告されたからだ。
それを振り切って結婚したのに、
今さら「やっぱり浮気されました」とは言い辛い。
「関西弁でチャラそうな人」と反対していた両親にも相談できない。
学生時代の友人は、みんな幸せそうだ。「可哀想」と思われたくない。
誰かに相談したい、話を聞いてほしいけど、そんな人はいない。
(でも、仕事はちゃんとしなきゃ! 大切な御荷物をお預かりするんだから)
自分を戒めた香帆は、次の客を見て驚いた。
「この荷物を送りたいのですが」
狩野桜志郎が、大きな箱を持って現れた。
(すごい、カッコイイ人)
まだ20代前半だろう。
背が高くて美形なだけでなく、華やかなオーラがある。
クールな美緒も、思わず見惚れるほどのイケメンだ。
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