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やがて時が来た。
現れた彼女は、僕を一瞥してから席に着く。
その顔はやはりハッとするほど美しい。
メイクが薄くなったのか、より彼女本来の美しさが前に出てきた印象だ。
「何の御用?」
冷たい目。
「実は、話がありまして……」
「話? 今更何の話よ」
「はい……実は……」
いざとなるとなかなか言葉が出てこないものだ。
「ねえ、はっきり言ってよ」
いらだちを隠さない彼女の口調。
折れそうになる心をグッと支えて、僕は彼女に向けて言葉を放った。
「好きです、付き合ってください」
「は?」
「本気なんです。僕はあなたのことが忘れられない。あの雪の日、高原のホテルで出会った時にどうやら僕はあなたに惚れてしまったらしい」
「……はあ?」
にらみつける彼女の語気に荒々しいものを感じたが、僕も後には引けない。
「僕ならあなたを理解できるし、それに支えられると思うんです」
「何を言っ……」
「あなたがご自身でも気づいていなかったミスを、僕はちゃんと見つけることができたでしょう?」
「ミス?」
「そうです。雪と言うものの性質を正しく理解していなかったが故に、あなたはあの時ミスを犯した。僕が気付かなければ、あなたは何度も同じミスを繰り返したでしょう?」
「……ふざけないで」
「ふざけていません。あなたをこの先理解し、受け入れられるのは僕しかいません。どうか、付き合ってください」
「できるわけないでしょ!!」
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