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オーバースロー
"振りかぶってピッチャー投げました…"というやつだ。
その一言で、あの日のことが急に目の前に映し出されたようだった。
それは鮮明に。
その日は大晦日で午後2時過ぎくらいだったと思う。
確か、私は小学校6年生だった。
庭で遊んでいると父親が親戚の家から帰って来て私のところに来た。
うちは毎年12月30日に家族総出で餅つきをしていた。
大釜にお湯を沸かしその上にせいろを5段くらい乗せて餅米を蒸し機械でついて、母親がのすという流れだった。
父親は、この時「今が家族水入らずで一番幸せな時なんだぞ」と言っていたのを覚えている。
そして、その板餅を切って、父親が親戚数軒に配りに行くのが大晦日の年中行事だった。
父親はその役目からまさに今、帰って来たところだったのだ。
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