ジャックフロストの記憶

2/11
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
 凍り付いた歩道を慎重に歩きながら、子供の頃のことを思い出していた。  大人になった今、両脇に積み上げられた雪は肩の位置ほどの高さだが、子供にとってはゆうに背丈を超えていてる。  だから、前後しか見えない状態で交差点までは一本道を進まなければならない。札幌の子供にとってはそれが冬の日常でもあるが、雪の壁に囲まれた氷の細道を進んでいるとまるで迷路にでもいるようだった。よく不安になり、焦燥に駆られて走り出して転んだ記憶もある。  雪は楽しかった。本当に小さいころは吹雪でない限り、外で遊ぶことが多かった。  だが、死にかけてからはやめた。  10年経った今でもあの冬のことは鮮明に覚えている。忘れられるわけがない。指先の凍傷の跡を目にするたび嫌でも思い出してしまう。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!