ありがとうジャスティン

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ありがとうジャスティン

『ぬううゥ……、ハニーかァ』  首領ベガもさすがに最終形態への変身は躊躇(ためら)った。首領に取っても最終形態は最後の切り札だ。  易々と奥の手をさらすワケにはいかない。 「どうします。お義父(とう)さん、まだ続けますか?」  ジャスティンは微笑んで(おど)けて訊いた。 『うっせェ。お義父さんじゃねえェ……。今日はこれから忙しいんじゃァ。トイレットペーパーを買って帰らなくちゃならん』 「えェ……、トイレットペーパー?」  ジャスティンも首をひねった。まったくワケがわからない。 『チィッ、なんでもない。今日のところは見逃してやろう。おいアンジェラ!』 「なによ。ジジィ?」 『ジジィではない。お父様じゃァ。良いか。ジャスティンの部屋へ泊まることなど死んでも許さんぞ』 「はァ、良いだろう。うっせェなァ」  アンジェラは唇を尖らせて不満な様子だ。 『門限は七時じゃァ。それより一分でも遅れたら金輪際、小遣いは一銭も出さん。スマホも解約じゃ!』 「ふざけるなよ。汚ったねェヤツだな」 『行くぞ。ポチ!』  首領はマントを翻し引き返していった。 「いえポチじゃなくって星ですよ。ベガ閣下」  慌てて星優真は首領の後に続いた。その後ろをボロボロの怪人たちも引き上げていった。  ひと段落して、やっと部屋にも静寂が戻った。 「フフゥン、ありがとうジャスティン!」  アンジェラは正義の味方に抱きついた。 「別に礼を言われるほどの事はしてないよ」 「ううん、ジャスティンがマジでやれば、お父さんをボコボコにしちゃっただろうから」 「どうかな。さすがに、首領の最終形態は手強(てごわ)そうだけどな」 「でもお父さんにあれ以上、恥をかかせずに済んだわ」 「だと良いけどね」  ジャスティンは微笑んだ。 「門限まで楽しみましょう」  アンジェラとジャスティンは抱き合った。
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