二枚重ねのダブルだから

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二枚重ねのダブルだから

『なッなにッ、トイレットペーパー?』  首領が聞き返していると怪人1号がボコボコにされて首領の足元へ吹っ飛んできた。 『ぬううゥ……、しっかりしろ』  それを見た首領は無理やり怪人1号を立ち上がらせ尻を叩いた。 『はァなによ。しっかりするのはアナタの方でしょ』 『いやいや、ハニーに言ったワケじゃなくて……。ちょっとだねェ』 『出かける時に頼んだでしょ。早くトイレットペーパーを買ってきてよ』 『いやいや、今はそれどころじゃないんだよ。ハニー。世界征服が掛かってるんだ』  何とも首領は歯切れが悪い。首領の背後では次々と怪人や戦闘員たちが倒されていた。  だがハニーは容赦なく首領を問い詰めた。 『何言ってるのよ。世界征服とトイレットペーパーとどっちが大事だと思ってるの?』 『いやァそれは世界征服の方が……』  首領が答えようとしたが、奥方のハニーは機先を制した。 『そんなのトイレットペーパーに決まっているでしょ。なんのために悪の黒幕(フィクサー)なんかしてるのよ』 『いやいや、ハニー。トイレットペーパーならこの前、買っておいたじゃないか』 『おバカさんなの。アナタ!』 『えッ、いや、決して我輩はおバカさんではないが』 『この前、アナタが買ってきたのはシングルでしょ。私が頼んだのはダブルなのよ。ダブル!』 『いやいや、ハニー。そんなこと言ってもシングルでもダブルでも同じじゃないか。重ねれば良いだけで!』 『おバカさんね。ダーリン。私が頼んだのは二枚重ねのダブルだから。そんなこともわからないの。悪の秘密結社の黒幕(フィクサー)のクセに。信じられなァい!』 『いやいや、わかったから落ち着いてハニー。買っていくよ。二枚重ねのダブルだね。すぐに買って帰るから機嫌を直してくれよ』 『そう、わかったわ。頼んだわよ。アナタ』 『ハイハイ、じゃァ切るからね。ハニー』 『愛してる。アナタ?』 『あ、ああァもちろん愛してるよ。じゃァね』  悪の秘密結社の首領は、大きな図体を(かが)めペコペコと何度も頭を下げて連絡を終えた。 『フゥ……』  大きくため息をつき、側近の星に戦況を訊いた。まだジャスティンたちに背を向けたままだ。 『よし、どうなった。ポチ。ジャスティンを片づけたか?』  側近に尋ねながら、おもむろに首領ベガは振り返った。
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