8人が本棚に入れています
本棚に追加
二枚重ねのダブルだから
『なッなにッ、トイレットペーパー?』
首領が聞き返していると怪人1号がボコボコにされて首領の足元へ吹っ飛んできた。
『ぬううゥ……、しっかりしろ』
それを見た首領は無理やり怪人1号を立ち上がらせ尻を叩いた。
『はァなによ。しっかりするのはアナタの方でしょ』
『いやいや、ハニーに言ったワケじゃなくて……。ちょっとだねェ』
『出かける時に頼んだでしょ。早くトイレットペーパーを買ってきてよ』
『いやいや、今はそれどころじゃないんだよ。ハニー。世界征服が掛かってるんだ』
何とも首領は歯切れが悪い。首領の背後では次々と怪人や戦闘員たちが倒されていた。
だがハニーは容赦なく首領を問い詰めた。
『何言ってるのよ。世界征服とトイレットペーパーとどっちが大事だと思ってるの?』
『いやァそれは世界征服の方が……』
首領が答えようとしたが、奥方のハニーは機先を制した。
『そんなのトイレットペーパーに決まっているでしょ。なんのために悪の黒幕なんかしてるのよ』
『いやいや、ハニー。トイレットペーパーならこの前、買っておいたじゃないか』
『おバカさんなの。アナタ!』
『えッ、いや、決して我輩はおバカさんではないが』
『この前、アナタが買ってきたのはシングルでしょ。私が頼んだのはダブルなのよ。ダブル!』
『いやいや、ハニー。そんなこと言ってもシングルでもダブルでも同じじゃないか。重ねれば良いだけで!』
『おバカさんね。ダーリン。私が頼んだのは二枚重ねのダブルだから。そんなこともわからないの。悪の秘密結社の黒幕のクセに。信じられなァい!』
『いやいや、わかったから落ち着いてハニー。買っていくよ。二枚重ねのダブルだね。すぐに買って帰るから機嫌を直してくれよ』
『そう、わかったわ。頼んだわよ。アナタ』
『ハイハイ、じゃァ切るからね。ハニー』
『愛してる。アナタ?』
『あ、ああァもちろん愛してるよ。じゃァね』
悪の秘密結社の首領は、大きな図体を屈めペコペコと何度も頭を下げて連絡を終えた。
『フゥ……』
大きくため息をつき、側近の星に戦況を訊いた。まだジャスティンたちに背を向けたままだ。
『よし、どうなった。ポチ。ジャスティンを片づけたか?』
側近に尋ねながら、おもむろに首領ベガは振り返った。
最初のコメントを投稿しよう!