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 心細そうに言う及川部長に、佐倉が「問題ありません」と言って上長席の方を向く。 「締めの作業は僕がほぼ終わらせています。ですから安心して外出なさってください」    及川部長はそれを聞き、祈るように手を合わせた。   「佐倉君──いつもありがとう」 「とんでもないです」   「いやいや佐倉君と椿さんのアシストがあるから、僕たちはお客様との時間を長く持つことが出来るんだ」    ようしやる気が出てきたと言い、及川部長は両手の拳をぎゅっとさせた。   「僕はこのまま、永田町に行ってきます。暗くなる前には戻ると思うけど、何かあったら連絡ちょうだい」    応接セットの横にあるアイアンのハンガーラックから、仕立てのよさそうな上着を取って袖を通し、及川部長は私たちにそう言った。   「行ってらっしゃいませー」   「お気をつけて」    板花さんや宮ヶ丘さんの見送りを背中で受け止めるようにして、及川部長は颯爽と部屋を出て行った。  
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