14人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
プロローグ
駐車スペースに車を停め、ドアを開けて古いコンクリートの地面に降り立つと、冷たいけれど穏やかな潮風が頬に当たった。
白いうみねこが旋回する空は、雲一つない秋晴れ。海は優しく凪ぎ、太陽を照らしている。
潮風のにおいが懐かしい。なんだか、胸が切なくなるような思いがした。
私は両手を少しだけ広げ、足を前へと踏み出す。もっと、この空気を感じたいと思ったのだ。
ここ小樽南防波堤には、百年以上の歴史がある。
ということは、この場所は百年以上、波や海風、雨、雪に晒されていたわけで、ところどころが削られて、穴が開いている。
つまり、足元が悪い。
はいていたパンプスのヒール部分が穴にはまり込み、私はあっという間にバランスを崩した。
「……!!」
「椿あやみ、気を付けろ」
最初のコメントを投稿しよう!