プロローグ

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プロローグ

   駐車スペースに車を停め、ドアを開けて古いコンクリートの地面に降り立つと、冷たいけれど穏やかな潮風が頬に当たった。  白いうみねこが旋回する空は、雲一つない秋晴れ。海は優しく凪ぎ、太陽を照らしている。  潮風のにおいが懐かしい。なんだか、胸が切なくなるような思いがした。  私は両手を少しだけ広げ、足を前へと踏み出す。もっと、この空気を感じたいと思ったのだ。  ここ小樽南防波堤には、百年以上の歴史がある。  ということは、この場所は百年以上、波や海風、雨、雪に晒されていたわけで、ところどころが削られて、穴が開いている。  つまり、足元が悪い。  はいていたパンプスのヒール部分が穴にはまり込み、私はあっという間にバランスを崩した。 「……!!」 「椿(つばき)あやみ、気を付けろ」   
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