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そろそろ夏休みを迎えるようとしていた。私たちは、三人で下校していた。
「ねえ、彼氏できた」
と佳恋が聞いてきた。
「まだ、だけど。なに」
「私は、夏休みになったら、ダブルデートしたくてさ。早く彼氏つくって。ねえ、紹介したら」
そう言う佳恋は、あいつの腕に抱き着いた。
私は、その佳恋の様子に腹が立ってしまった。
そして、そんな自分が嫌だった。なにより、嫌だった。
きっと悪気はないはずなのに、よく思えない自分が嫌だった。
「俺は、時々紹介してるけどさ。お前が納得いく人はいないんだろう」
あいつは、抱きついていた佳恋の腕を払って私の目を見て言った。
私は、そんなところがますます好きになってしまった。優しくて、昔から変わらないところが好きだと思った。大事な友達の彼氏なのに、ますます好きになってしまった。
「なかなか、難しいよ。友達の友達だから、もしうまくいかなかったらって思ったら、踏み込めないんだよね」
「いいじゃん。今が楽しければいいんだよ。別れた後のことなんて考えなくていいんだよ。ねえ、誰でもいいから付き合っちゃえばいいのに。デートしたいから」
「でも、急には無理だよ」
「なんで、私は、一緒に恋バナしたいんだよ」
「佳恋、やめろよ。困ってたんだろ。友達なら、気持ち考えてやれよ」
「なんで、彼女の私の味方になってくれないの」
「俺は、誰が言ったからじゃなくて、自分が持ってる考えと近いかを大事にしてるから。それが分からないなら、別れよ」
「なんでよ」
「そういうとこだよ。友達を大事にしてあげられないところだよ」
と言って走って行ってしまった。
佳恋が追いかけようとしないから、私は全力で走って行った。
小学生の頃はよく追いかけっこしていたはずなのに、小さいころより早くなったあいつに追いつくのは大変だった。でも、何とか追いつけた。
「待ってよ。私のために怒るなんて、馬鹿げてるよ。戻って来てよ」
とあいつの肩に触れる。
私は、息が整う前に声をかけた。こういうところで佳恋に負けたのも知れない。
「そんな、無理すんなよ。ちょっと反省してもらえればいいんだよ」
「別に反省なんていらないよ。私は、別にそこまで傷ついてないし」
「やっぱりお前にすればよかったかもな」
私は、その言葉が許せばかった。私は、好きだから嬉しいはずなのに、こんな状況で言われても嬉しくなかった。むしろ、腹立たしくも思えた。
「なに言っての。私の友達から、私に乗り換えようとする奴だったなんて悲しいよ」
「やっぱり、お前はいいやつだな。俺じゃ叶わないな」
「あんたもイイやつだけどね。この状況はなしかな」
と言うと私たちは笑いあった。
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