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私は、階段を降りきると、自意識過剰だったような気がした。もしかしたら、私がただ何か落とし物でもしたのか、私のスカートが折れていてそれに気づいて声をかけてくれただけではないかと思い返した。だから、私は、階段を駆け上がった。
「ねえ、なにかありました」
「特にないんですけど、ただ何組になったのか知りたくて。僕は、4組」
と新入生の男の子は、笑顔で言った。
その言葉に、私は安心した。それに私が先輩だって気づいてないことも分かった。私は、なんとなくからってみることにした。
「私は、昨日行ってないから、学校着くまでわからないよ」
「まって、もしかして昨日休んだの。じゃあ、僕と同じ4組だ。昨日の入学式僕のクラスだけ、欠席者がいたんだ。名前は、覚えてなかったけど、女の子だったから」
と楽しそうに早口で男の子は言った。
男の子と話すのは、もっと緊張するもんだと思っていたのに、今まで話した誰よりも緊張しないで済んだ。それに、一年生のような純粋さも可愛さもないはずの私を新入生だと思っているのが可笑しかった。それに明るくて楽しそうで一生懸命な男の子はかわいく思えた。だから、自分でも気づかないうちに口角が上がっていたらしい。
「え。どこか可笑しかった」
と新入生の男の子は、必死そうな表情できいてきた。
「だって、私も新入生だって一言も言ってないのに決めつけたところがね。おかしかったの」
と私は、笑いながらその質問に答えた。
「もしかして、先輩だった」
「そうだよ。あたり」
「いきなりタメ口で話してしまい、すみませんでした」
「いいのよ。謝らなくて、どうせ大した人じゃないから。一年生に間違われるような人なんだから、気にしないで」
あの子と話すのは、楽しかった。けれど、あんなに明るくてかわいい子はきっと人気ものになるから、自分じゃ釣り合わない。だから、好きになる前に距離をとっておくべきだと思った。だから、さっきよりも早足で学校まで向かうことにした。
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