隣のあなた

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 月曜日になって、学校に着いた。いつも通り一人しかいない教室で窓を眺めていた。私は、隣の席に人が来るのかが気になって、どれだけ時間が過ぎたかも、教室に他の人がいることにも気づかなかった。隣の席に彼が来るまで、気づかなかった。  「おはようゴザイマス。今日いつもより早いね。先週大丈夫だった。あと、あの、えっとジュギョとかさ。どうかなってオモウンだけど。これとかイルかな」 と緊張しちゃって所々(ところどころ)カタコトになったり、声が裏返ったりしながらも頑張って声をかけてあの紙を手渡しした。  「おはよう。そんなに、今日はやく来てないよ。僕は、大丈夫だけど、君顔も赤いし大丈夫そう。あと、これくれるの」  「うん。休んでたから、こまるかなと思って来週試験あるし。でも、試験なんて悪くても問題なよね。どうせ来週いっぱいでまたいなくなちゃうんだもね」 と早口になりながら言った。  「そんなことないよ。ありがとう。嬉しいよ。」 と彼は笑顔で言った。  私は、なんだかほっとした。  「よかった。」 と私は自然に口に出てしまった。  それから、しばらく私のわたした数枚の紙と自分の教科書を見ていた。私は、気づいてくれたのかなと思って少し嬉しくなった。  「ねえ、これって。このページ数って僕が持ってる教科書のページ数なのかな」  「そうだよ。その方がわかりやすいかなと思って図書館で教科書見てきたの」  「こんなことしてもらったのは、初めてだよ。ノートの写真とかは他の人からももらったけど。みんなここまでしてくれないよ」  「そうなのかな」  「そうだよ。ありがとう」  「でも、字とか見づらくない。字下手だし」  「そんなことないよ。きれいにまとまってるよ。僕が使ってる参考書よりもわかりやすいよ」  「さすがにそこまでじゃないでしょ」  「でも、すごく嬉しい。僕のこと嫌ってるのかと思っていたから」  「別に嫌いなわけないよ」  「そうなの」  「うん」  「じゃあ、友達になってくれる」  「いいよ」 と言った。  最初は、話すことに緊張してあまり上手にしゃべれなかった。それでも、彼のために作ったプリントを喜んでもらえたことが嬉しくて恥ずかしさとかは、忘れてしまっていた。
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