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休み時間になると同じクラスの女子のグループから階段裏のところに呼び出された。怖くて行きたくなかったけれど、このクラスをまとめている彼女たちに歯向かうことなんてできなかった。無視した方が、ずっと恐ろしいと思ったから。
「ねえ、ああいうの目障りだから、やめてくれない」
「調子乗らないで、どうせ友達だって少ないくせにさ」
「でも、友達になってくれたよ。隣の席の転校生の人」
「だから、それが目障りだって言ってんの。わからないの」
「でも、それって何か関係あるの。あなた方に」
「たまたま隣の席だから、仕方なしに仲良くしてあげてるだけなのに、ホントに友達だって思ってるのが恥ずかしいよ」
「共感性羞恥っていうのかな。あんたみたいなのが仲良くしているとあまりに哀れで恥ずかしくなってくるんだよね」
「そうそう。目障りだよ」
「部をわきまえろって言いてるんだよ。別に誰とも仲良くするなと言いてるわけじゃないし」
「ごめん。もう話さないから」
と思わず謝ってしまった。
「そうだよ。もうしないでね。ほんと目障りだからさ」
「じゃあ、見なきゃいいんじゃない。君たちには関係ないでしょ。僕たちのことなんて。それに、君も謝る必要ないよ」
と隣の席の転校生が言った。
「いつからいたの」
「おびえた顔で教室から出ていった人がいたら気になってついてくもんじゃないのかな」
「でも、病み上がりなんだよね。こんな寒いとこいたら、よくないよ」
「でも、僕は、誰かが悲しんでるところは、見たくないから。友達が傷つけらているのに教室戻るって発想は浮かばないよ。君たちと違ってさ。それに、僕のことがそんなに心配なら、僕の友達も大事にしてほしいな。それができないなら、僕は君たちととても仲良くする気分になれないよ。もう教室に戻ろう」
と彼は強い口調で言うと私の手をつかんだ。
私は、彼のその一面が気になってしまった。それと同時にあの子たちの方が色々知っているのかと思うと悲しくも感じた。それでも怖いという感情はすっかり消えてなくなっていた。
それから、私は、まるで少女漫画のヒロインにもなった気持ちになった。
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