隣のあなた

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 そこから、彼に引っ張られながら、教室に戻った。私たちが、席に着くとすぐにチャイムの音が聞こえた。  「何とか間に合ったね」  「そうだね。でも、授業始まったか」  「わかったよ」  私たちが話終わってしばらくすると教室の扉が開いた。  「遅れて、すみません」  「もういいから、早く席に着きなさい」  「はい」 と彼女たちは返事をして席に戻った。  「もうなにやっての」  「もう、チャイムなっても来ないから心配したよ」  「ごめん。なんかいろいろ」  「あっそうか」 と彼女たちが遅れて来たことで彼女の近くの席の近い人たちが話しかけていた。私は、ほんの少しそれが羨ましかった。私が遅れて入るとヒソヒソ声が上がるくらいだから、心配してもらえる彼女たちが羨ましかった。  「そこ、遅れて来たんだから、喋らないの」 と若い女性教師は言った。  「そんな顔しないでよ。せっかくかわいいのに」 とお調子者のあのヒトが言った。  すると、教室には、和やかな空気に変わった。どう考えたって、それがいいことではないはずなのに、それが許される彼らがまぶしくも思えた。それでもそれをかっこいいとは思えなかった。ただ、うらやましかった。ただ、それだけのことだった。
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