隣のあなた

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 今日最後の授業が終わって左側を見たら雨が降っていることに気がついた。私の視線に気づいたのか彼から声をかけられた。  「君の言った通り雨、降ってきちゃったね」  「そうだね」  「ねえ、駅まで傘借りてもいい」  「いいよ。どっちが良い。駅までだけじゃなくてもいいけど」  「返せなくなったら、悪いから」  「別に返されなくてもいいんだよ。いっぱいあるから」  「じゃあ、君が使わなかった方をもらうよ」  「わかった」 と言って水色の傘を渡した。  それから、しばらくして先生が教室に入ってきてホームルームが始まった。  ホームルームが終わると私たちは、昇降口まで一緒に行った。  「ねえ、せっかくだから一緒に帰らない」  「いいよ」  「じゃあ、君と同じ傘に入って駅まで行って良い」  「それって相合傘ってこと」  「そうだよ」  「それできるほど、この傘もその傘も大きくないよ」  「でもこうすれば、大丈夫でしょ」 と言いながら傘をひろげ私を抱き寄せた。  彼の体温も感じて鼓動も聞こえて彼の息がかかるような距離。私は、親以外の人をこんな距離に人を入れたことがなかった。ドキドキはするけれど、なんだか心地よくも感じられた。いつもは、走っているのに今日はゆっくりしか歩けないのにとても駅までの距離が短く感じられた。  駅に着くと彼と方面の違う電車に乗った。彼は、さっきまで一緒にさしていた水色の傘を持っていった。
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