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夏休みが明けると二人は、すっかり高校中に知られたカップルとなっていた。二人はあの喧嘩を経てとても仲良くなった。まさに二人の関係は雨降って地固まるといった様子だった。
私は、そんな幸せそうな二人を見て改めて失恋をしたと思う。私はあいつと付き合いたかった。もし二人を仲直りさせなければ、付き合えたのかもしれない。でもきっとそれでは幸せになれない。誰一人と幸せになれない。
それにあいつは、友達の彼氏を奪うような人を好きになんてなってくれないと思う。だから、こうするしかなかった。私は、誰一人と友達を失いたくなかった。私は、恋より友情を大事にしたいから。
私たちは、いつものように三人で下校していた。私は、ここに居ない方が良いような気がした。
「ねえ、私、明日から、一人で帰ろうかな」
「なんで、帰ろうよ。私たちは気にしないよ」
「俺たちに気を遣う必要はないよ。でも、お前が気になるならそれでもいいよ。ただ、もしお前が誰かから何か言われてるなら、俺が言いに行くから、気にするなよ。」
「別に、誰かに言われたとかじゃない。気を遣っているわけでもないよ。ただ、私も二人を見ていたら恋人がほしいなって思って。二人と一緒にいたら、何も始まらないでしょ」
「そっか。それなら、仕方ないね」
「でもまたいつか一緒に帰ろうよ」
「そうだね。ありがとう」
と私は言った。
「あとさ。二人が結婚するってなったら結婚式招待してね。友人代表のスピーチも私がやるから」
「気が早いよ。まだ、結婚するかなんてわからないし」
「そうなの。ちょっとショックだわ」
「でも二人はお似合いだよ」
「そうかな」
「そうだよ」
「じゃあ、頼むよ」
と彼は小声で私に言った。
「当然でしょ。昔、約束したんだから。私の時もしてくれるよね」
と私も小声で返した。
「当然だ」
とまた彼は少しかがんでで私の耳にささやいた。
「えー。二人は何話してるの」
「いつかわかるよ」
と私たちは声をそろえて言った。
私は、失恋してしまった。もし、自分の気持ちに素直になっていれば、付き合えたかもしれない。でも大事な友達が幸せならそれで良かった。
片恋~もし素直になっていれば~ 友達 終わり
片恋~もし素直になっていれば~ 完結
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
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