はらぺこ、はらぺこ。

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 慌てたように、奥から女の人が出てきた。これが、なかなかの美人。ひょっとしたら二十歳いってなかったかもしれない。頭のフリルのついたかチューシャみたいなのを付けてて、エプロンドレスみたいな……そう、メイドさんっていうの?まさにあんな感じの制服だったんだ。  艶やかな黒髪のショートヘアで、目がくりくりと大きくて、すっごく可愛い子だった。ついでに胸も結構デカい。俺が思わずデレってしてると、おひとり様ですか?って尋ねてくる。 「そ、そそそ、そうです」  俺は緊張しちまって、赤べこみたいにかくかくと首を縦に振るわけ。するとウェイトレスさんはにっこり笑って、こちらへどうぞ、と席へと案内してくれる。  いやあ、まさに極楽だったよ。お姉さん可愛いし、そのあと注文したご飯もめっちゃ美味しかったしね。ハンバーグと、ステーキと、スープと、ついでにチキンまで頼んじまった。夕食はがっつり食べたし、深夜なのにだぜ?  どれもこれも最高に美味しかったって言っておく。  とまあ、俺の話はここまでなんだが。  え、これのどこがホラーなわけ?ってお前ら思っただろ?思ったよな?うんうん、尻切れトンボじゃねえのと思っただろうことは容易く想像がつくとも!  だから結論言っておくとな?  俺、もう動画アップできなくなっちまったんだ。ここにメッセージを流し込むことだけ、どうにか許してもらったんだけどさ。  なんで動画アップできなかったかって?そりゃ、家に帰れなかったからですけど?パソコン操作する手も、もうないしなあ。  何が起きたか知りたい?最高の料理を食べて、可愛いお姉さんに接客してもらって、そのあと何があったか知りたいって?いいともいいとも。じゃあ、お前らも検索してみろよ。 『はらぺこ はらぺこ レストラン 近所 ちかこさん おなかが空いた』  これだ。間違えるなよ?  検索するなら、それなりの覚悟を持ってやるようにな。  尤も――この話を最後まで聞いちまったお前らは、検索したくてたまらなくなってるだろうけどよ。  お前らも、この数分後には思ってるはずだぜ。  ああ、お腹空いた、ってな。
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