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さっき俺がつっこんだことがあっただろ?家のすぐ近くに突然レストランができるとかありえねーって。そんな都合の良い空き地なんか近所にねーだろって。実際その通りなんだよ。俺の家って駅近くのマンションなんだけどさ、あんな立派なレストランが入るような場所なんかねえの。さすがにそんな心当たりねえの。
それなのに――駅前通りを一本裏に入ってすぐのとこ。うちから徒歩三分の場所に、そのレストランはできてたんだ。サイトで見た通り、赤と白の縞模様みたいな看板立ててさ。両隣にあるケーキ屋と眼鏡屋には何度か行ったことがある。だから、その道も一度も通ったことないとか、気づいたことがないとかそんなことないんだ。あるはず、ないんだ。
前にその道を通った時は、確かに別の店があったんだと思う。ケーキやと眼鏡屋の間にも建物があって、何か別の店は入っていたような覚えはある。でも。
レストランを見ちまったらもう、思い出せない。そこに元々何があったのかなんて。
当然、そのレストランが、いつレストランになったのかどうかも。
「な、何がどうなんてんの?」
不思議には思ったけど、深夜だから周囲に誰もいないし?人に話訊けるとか、そういう状況でもない。
何より、俺はめっちゃくちゃ腹が減ってる。何でもいいから、美味いもん食わせろって気分になってる。レストランからは、肉料理のいい匂いがしてるし、ここまで来て帰るって選択肢はとっくに俺の頭からなくなってた。
だから、入口の自動ドアに近づいてそっと中を覗いてみたんだ。
「やってる、よな?」
中はとっても綺麗だった。ごくごく普通の、ファミレスの内装だと思ってくれればそれでいい。壁がクリーム色で、茶色の円いテーブルと椅子が並んでて……むしろ一般的なファミレスよりちょっとおしゃれだったかも。壁に花畑とか、湖とか、綺麗な絵が飾られてたのも覚えてるよ。
ただ、深夜だからか人がだーれもいない。本当に営業してるのか心配になっちゃうくらいに。
俺はそろそろと自動ドアのボタンにタッチして、中に入った。店員も一人も見当たらなくて不安になってくる。あのー、と奥の厨房の方に声をかけようとしたその時だ。
「あ、お客様!すみません、いらっしゃいませ!!」
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