ビター&スイート・メモリー

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 その後、慶一は早紀にいろんな事を教えた。「資料の作成方法」、「早紀の小言の相談相手」…。徐々に呼び方も名前で呼ぶくらい親密になっていた。 最大の事件はお客様とのレビュー2日前で資料は8割位作成し、最後の仕上げを慶一は早紀にお願いして早紀は帰宅した。ところが、その夜に早紀は体調不良になり、3日間休暇する事になった。慶一は他の作業もあるが半徹夜状態で資料を仕上げた。 レビュー翌日に早紀は出勤した。早紀は謝ろうとすると「僕が早紀さんに負担をかけ過ぎたのが悪かった」と流してくれた。 今日の早紀があるのは慶一のおかげと言って過言ではない位であった。ほのかに恋心が芽生えていた。 雑談でさりげなく早紀の友人である『新井美蘭』が結婚した事を話した。  「慶一さん。私の友人がこないだ結婚したけど、結婚式は華やかだった。」  「それはよかったじゃない。」慶一は相槌をうった。  「慶一さんはどんな結婚生活が理想ですか?」早紀が尋ねた。  「うーん、そうだね…。最近は共働きが多いから夕食は会わない事もあると思うけど、極力朝食は一緒に食べて、その時いろんな出来事を話して、休日は行動を共にしたい。月に1回位はご褒美で贅沢な食事をする。あとやはり子供は欲しいね。」慶一が淡々と答えた。  早紀は「慶一の結婚観を聞くのに成功した。」と確信した。  「そうなんですか?慶一さんはしっかりとしたビジョンをもっていますね。」と言った後、  「私は、ただ一つだけ夢があります。それ以外は相手にあわせるようにします。」早紀は続ける。  「もし女の子が生まれたら『美早紀』とつけたいと思っています。」  「どうして?」慶一が不思議がった。  「私はブスなので、頭に『美』をつけて子供は『美人の早紀になってほしい』という願いを込めています。」  この事は今まで誰にも話した事はなかった。  一瞬とまどって、「外見を言うのはセクハラになるけど…、別に早紀さんはブスでもないし卑下しないでいいよ。それに外見より中身が重要だから…。でもその気持ちは思いがこもっていて素敵だね。その娘は早紀さんに似て美人になるよ。」と返した。
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