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○乗り換え
早紀は慶一の視線を気にしながら横顔をみている。
慶一はスマフォの画面を難しそうな顔でみている。その眼差しは以前の輝きや優しさは無い。
早紀も学とつきあってから髪の毛を少し短くしている。
過去の事が川の流れのように去ってしまったような寂しさに、早紀は思わず涙があふれてしまいそうになっている。
「私だけが愛していた。」という事に初めて気づかされたように感じる。
大手町に着く。二人共ここで乗り換える。早紀は東西線、慶一は千代田線。
早紀はラッシュに消える慶一の姿しか見守ることしかできない。
「気付かれる事もなくそれぞれに待つ人の元へ戻っていくのね。もう慶一さんとは会うことは無いかもしれない。」と感じる。
西葛西駅では雨も止み、今日の事は何もなかったかのようにありふれた夜がやってくる。
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