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わたしはついに妊娠した。
断っておくが、満とは寝ていない。というか、二週間前には彼とは破局した。だから、わたしは結局、彼に身体を預けることはなかった。
「おめでたです。よかったですね」
産婦人科医に第一声に言われた。わたしが浮かない顔をしていることに、産婦人科医は怪訝そうな表情をする。
「もし、望まない妊娠なら、早めに中絶することをおすすめしますよ」
やはり、この手の患者が多いのだろう。
わたしはお酒を控えることにした。そして、お腹が目立たないような、ふわりとした服を着るようになった。
大家さんはわたしのファッションが明らかに変化していることに気づいていたが、最近はわたしを見ても気づかないふりをして、部屋に引っ込んでしまう。後ろめたいことがある証だ。
だが、大家さんに非はない。事故物件という瑕疵を消したのだから、法に触れることはやっていない。
わたしが妊娠が発覚した時点で、満から部屋に呼び出された。あの占い師が宣言した通り、別の女性の存在が頭をよぎった。
案の定、部屋に入るなり、満はわたしの前で土下座をした。本人は誠意を示しているつもりだろうが、わたしにはパフォーマンスにしか見えなかった。
「すまない。好きな人ができた」
わたしが黙って満を見下ろしていると、半べそをかいた満が顔を上げた。
「その涙は何?懺悔してるつもりなの?」
「申し訳なく思ってるよ」
「土下座なんてやめてよ。わたし、そういうの嫌いだから」
「ごめん」
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