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先生、早退したいです!
某高校。
五時間目の授業を担当するのはとても憂鬱だ。私も含め、他の教師はみんな思っていることだろう。
五時間目というのは、お昼ごはん直後の時間帯である。みんなお腹いっぱいで眠くなってくる時間であり、授業のモチベーションが下がってくるのだ。
だから、今日もこういうことが発生する。
「先生!」
私が英語の授業を始めようと黒板の前に立った瞬間、生徒の一人が手を挙げたのだった。
「お腹がすいたので早退していいですか?」
「またお前か田中!」
一年三組の田中少年。彼はいつも一番最初にこういうことを言い出す。ぴしっと挙げた手がなんとも勇ましい。無駄にイケメンなのが腹が立つ。
「いいわけないでしょ、ていうかお弁当食べたばっかりじゃないの?なんでお腹すいてるのよ!」
「育ち盛りなので!」
「自分で言うな!駄目に決まってるでしょう、却下よ却下!」
「えー」
仕方ない、というように再び着席する田中君。彼はすごすごとバッグの中からカップ麺を取り出している。いやだから、なんで当たり前のように鞄の中からカップ麺が出てくるのか。しかも、既にお湯が入っているのは何故だ、どうやったんだ。
「先生、私もおなかすいたので、ちょっと駅前のマックに走っていいですか?」
残念ながら田中君を注意するより前に、別の生徒が手を挙げてくる。
学級委員の鈴木さん、どうしてそこのアホを注意しないで自分もボケに走るのか!
「駄目に決まってるでしょ、この学校駅まで徒歩ニ十分あるのよ!?マック買って帰ってきたら授業終わってるわよ!」
「ちっ」
「今舌打ちした?ねえ舌打ちしたの、なんで?」
おかしい。
なんで大和撫子の見た目でそんなガラが悪いのだ。
「せんせー」
さらに、今度はサッカー部の佐藤君がのんびりとした声を出す。
「このままだとお腹すいて倒れそうなので、夢の世界に逃げ込んでいいですか?」
「いいわけあるかい!堂々と先生相手に居眠り宣言する馬鹿いる!?」
「ZZZZ」
「はっや」
駄目だと言ってるのに、彼は手を挙げた姿勢のまま眠り始めた。どんだけ器用なんだろう。
これは叩き起こさねばと彼の席に近づこうとした直後。
「先生、あたしもお腹すきましたあ!三つ隣の駅のショッピングモールでお肉のタイムセールやってる情報が入ったので行ってきていいですか?」
「なんで?ねえなんでその要求が通ると思ってるの、山田さん?」
「先生先生先生!俺も腹減ってやばいんでちょっと近所の焼肉食べ放題に行ってきますう!」
「もはや宣言!許可も取る気ないの斎藤君!?」
「先生!異世界に魔王が襲来して大変だという情報が入ったので、今から異世界転生して救済してくるけどいいですよね!?」
「スケールが無駄に大きいわよ加藤君!!」
なんでこうなる、
私は頭を抱えるしかない。このクラスだけじゃない、他のクラスも大体五時間目はこんなかんじなのだ。
お前らは飯を食ってないのか。
なんでそんなにご飯のために早退やサボりを決め込みたいのか。
しまいには。
「せんせー、田中君がコケて教室の床をカップラーメンの汁まみれにしましたあー」
「だあああああああああああああああああ!」
掃除のために、授業中断。
こんな学校、嫌すぎる!
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