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再会。
「お疲れ様です、居島さん。正面、いいですか?」
久々に会う先輩へ声を掛ける。うん、と居島さんは小さく頷いた。失礼します、とお酒の入ったグラスをテーブルに置き、腰を下ろす。久し振り、と薄い笑みを浮かべて私を見詰めた。
「ご無沙汰しております。乾杯、いいですか」
グラスを差し出すと、乾杯、と自分のジョッキを軽く当ててくれた。お互い、少しだけお酒を口に含む。
「何だか席替えが始まったね。代の被っていない後輩もいるし、知った顔の人が来てくれると安心するよ」
「まあ二次会なんてそんなものじゃないですか?」
「ジジイに寄り付かないのも当然か」
「まだ二十代なのに何を仰いますのやら」
今日は大学時代に所属していたテニスサークルの、立ち上げ二十周年記念パーティだ。一次会は立食形式で四十人以上集まった。二次会には二十数人が参加している。私が卒業してから既に五年が経っているので居島さんの言うように知らない後輩もちょこちょこ見受けられる。現にこのお店で最初に座った四人掛けのテーブルにも、知らない女の子が一人混じっていた。相手から見たらこっちも知らない先輩には違いないので、気を遣わせないよう部室や部誌、合宿の話なんかを振った。なかなか元気に答えてくれたのだけど、相手も頑張ったのだと思う。だから居島さんが一人になった瞬間を見計らってこの席へやって来た。ご挨拶したかったのも勿論あるけど、ちょっと疲れたので落ち着きたかった。
「二十九歳なんて、卒業したての子から見れば十分ジジイだよ。アラサーだもの」
「その言葉を鵜呑みにするなら、二つ下の私もアラサーババアってことになります?」
やり返すと、二つ下はまだ若い、と手を振った。
「下手な謙遜はこっちも傷付けるんですからね」
「高橋さんは大丈夫だよ」
「そんなことはありません。私だって傷付きますぅ」
唇を尖らせる。居島さんは穏やかな笑みを絶やさない。その表情に肩の力が抜けた。やっぱり昔と全然変わっていないな。
「それにしても居島さんにお会いするのは何年ぶりでしょう? 随分間が空いた気がします」
私の問いに、七年だよ、と即答した。
「やけにはっきり断定しますね」
「だって卒業以来、初めてだもの。僕がこういう会に参加をするのは」
その答えに自然と目を見開いた。
「意外です。居島さん、優しいからてっきり付き合いもいいのかと」
どういう意見さ、と微笑んだまま首を振った。
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