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「あぁ、桜愛だ。会いたかった」美玖は手のひらで桜愛の顔を撫でて行く。目から鼻そして唇。
愛おしそうに指先が触れて行くたびに桜愛の涙は溢れてしまい美玖の顔がぼやけてしまう。
「桜愛、桜愛の季節に一緒に居られなくてゴメンね。ずっと一緒に過ごそうって約束したのに。
1人にさせてゴメン」
「み、美玖?本当に?」
「うん。俺だよ」
桜愛は震える指先で美玖に触れた。彼は桜愛の手を取り自分の頬に擦り付ける。
そして笑った。
桜愛が大好きだったあの笑顔で。
「美玖、美玖、」
桜愛は精一杯背伸びして美玖に抱きつくと、その体を彼が力強く抱きしめてくれた。
スゥッと体が溶け合うような感覚になり桜愛はやっとゆっくり息を吐いた。
そして、気づく。
ここが外であるということを。
「美玖、ここ外だよ。見られてない?」
桜愛は現実に引き戻され頭上の美玖の顔を仰ぎ見ると「桜愛可愛い」と頭に頬擦りしてきた。
「美玖、あの、周りに気づかれたらヤバくない?離れないと」桜愛は今更だが美玖から離れようとするが美玖の腕の力が更に込められてしまい身動きが取れない。
「桜愛、嫌だ、離れないで。」
「美玖、今はそうじゃなくて周りの目がね、、」
「桜愛、離れていかない?」
「う、うん。」
「じゃあ、手繋ご」美玖は桜愛の手を繋ぎそのまま歩いて行く。
いや、だからめっちゃ見られてるけど。
堤防にいる人達はまばらとは言え、たぶん彼がミクリである事に気づいている。
何故なら彼はスーツを身にまとい変装する事なくテレビの中の彼そのものだったからだ。
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